“In the heat of the night”は米国の古い小説。
そして、たまたま先日触れた映画の原作でもあります。
「夜の大捜査線」
久々に観賞してみました。
やはり素晴らしい作品です。
第40回アカデミー賞作品賞受賞作だけのことはあります。
賞を争ったライバル作品は、
「ドリトル先生不思議な旅」「卒業」
「俺たちに明日はない」「招かれざる客」
という名作ばかり。
それらを上回る評価を得た作品です。
ストーリーはどちらかといえば単純。
ただ、
シドニー・ポワチエ演ずる黒人刑事 VS ロッド・スタイガー演ずる白人警察署長
のセリフが非常に面白いのです。
★ 左がシドニー・ポワチエ 右はロッド・スタイガー
やりとりの裏にあるそれぞれの感情を観る側が考え解釈する余地が広いのです。
一人寂しく暮らす「嫌われ者」と自嘲する署長。
ポワチエ演ずるヴァージル・ティップス刑事から同情されます。
「黒人に言われたくなはい。同情なんてたくさんだ」
署長は言い返すのです。
物語の後半で2人が漸く近づいたものの、南部特有の差別意識は根強いのか?
と思う人もいるでしょう。
私は違う解釈をしました。
「おまえは黒人としてひどい差別を受けてきただろう。それに比べれば、
俺の侘しさなんてたいしたことないぜ」
署長が暮らす住まいを訪れ、一緒に酒を酌み交わしたのは、ヴァージルだけ。
誰も訪れようとしない署長宅。
そこに署長はヴァージルを招いています。
これは、心を通じ合えた友として認めたからではないか。
そういう友に対して自分なりの理解を示した。
けれど、日頃から堅物で融通が利かず怒りっぽい署長は照れたのでしょう。
また、被差別者へのストレートな同情の言葉ではヴァージルに失礼な気がしたのかも。
事件解明の鍵を握る黒人女性の店に赴く際、ヴァージルはいいます。
「白人はごめんだよ」
署長に対して「来るな」と言ったのです。
黒人差別がきつい地域です。
捜査対象の黒人女性が白人警察署長に素直に話すとは思えない。
だから俺に任せておけ、と。
そのヴァージルも黒人女性に対し、証言を求める際に
「白人と黒人では刑期が違う」
と女性が証言を拒めば、裏稼業で引っ張ることを示唆します。
差別されてきた黒人刑事が、黒人差別という現実を利用して捜査する。
哀しい場面です。
こういった場面が訪れることを予想したヴァージルが白人署長にそれをみられたくなかったのか。
事件は解決し、旅の途中だったヴァージルは列車で南部の街を去ります。
去り際にヴァージルと署長は笑みを交わします。
お互いの友情を確認できたシーンでしょう。
その後の署長が一瞬だけ寂しそうな表情になるのです。
「黒人に言われたくない」
と強がってみせた署長は、彼の理解者であるヴァージルとの別れを惜しんだのです。
この作品は、随所に観る側の解釈を求めるシーンがあります。
どのような解釈でも物語は成立します。
上記したようにストーリーの根幹は単純です。
そこに米国南部の黒人差別問題をからめています。
それをどう読み解くか。
この時代の映画にはこういう楽しみがありました。
ロッド・スタイガーはアカデミー賞主演男優賞を獲得。
ライバル男優は、
ポール・ニューマン(「暴力脱獄」) スペンサー・トレイシー(「招かれざる客」)
ウォーレン・ベイティ(「俺たちに明日はない」) ダスティン・ホフマン(「卒業」)
でした。
シドニー・ポワチエは・・・
「招かれざる客」にも主演していますが、ノミネートされませんでした。
1964年に「野のユリ」で受賞していたので、はずされてしまったのか?
警察官役のウォーレン・オーツも素晴らしかったのですが、助演賞の候補にはなりませんでした。