法定後見制度に関する審判を求める書類作成業務を受任することが多い私。
この業務を始めたのは、偶然に近い出会いがきっかけです。
既にブログの記事で述べましたが、私は司法書士になりたくて試験を受けたわけではありません。
うつ病でやむなく休職し、結果的に退職。
その後の社会復帰の手段として選んだのが司法書士だったのです。
試験が1日で終了し、問われるのは基本的な知識。
そういうお手頃感と、これ以上はサラリーマンをやりたくないから。
他の司法書士が聞くとあまり愉快ではないような動機です。
開業し挨拶回りをした際の出会いでした。
糸島市内の同業者と一部の他士業に挨拶回りをする。
そういう方針で始めた挨拶回りです。
たまたま糸島市と福岡市の境界で、福岡市のエリアにある事務所を訪れました。
そこは司法書士と社会福祉士の合同事務所でした。
結果的に、そこでの出会いが今の主な業務につながっています。
法定後見開始の審判から破産手続の申立て、任意整理といった業務を受任しました。
もともと登記に強い関心があったわけではありません。
一方で、サラリーマン時代には裁判所に提出する書類作成をしていました。
たどりつくべくしてたどりついた業務だったような気がします。
お会いするのは認知症の高齢者や知的障害あるいは精神疾患のある方々。
その方々には色々な人生模様があります。
中には、育児放棄の果てに虐待まで受けたような方もいらっしゃいます。
そういった方々の人となりを明らかにし、裁判所に正確に伝える。
話を丁寧に聞き、表情を読み取り、あるいは室内の様子から様々な事情を察する。
これは、ロス・マクドナルドが創造した私立探偵リュウ・アーチャーのスタイルに近い・・・
私が理想とする仕事のスタイルを実現できるのではないか。
そう思ったのでした。
今の私は、まさにリュウ・アーチャーを意識して仕事をしています。
リュウ・アーチャー登場作品は2作品が映画化されました。
いずれもポール・ニューマンが演じています。
映画のニューマン=アーチャーが着用していたようなドレスシャツも意識的にオーダーしました。
リュウ・アーチャーのように没個性的インタビュアーとして対象者の人生をみていく。
私の仕事が終われば、法的な保護を受けることが確定し、社会福祉士の先生が後見業務を開始。
私は対象者の記憶からも消えていく。
ちょっとだけ対象者の今後の人生に光が差すために働けたかな。
こういう満足感をかすかに感じながら。
私にはちょうどいい感じの仕事になっています。
★ リュウ・アーチャーが登場する長編18作品のうち13番目に書かれた「ブラック・マネー」
1965年、私が生まれた年の作品です。