今年の司法書士試験は、通常のスケジュールで7月の第1日曜日。
あと1か月ちょっとになっています。
今頃になって過去問の使い方を書いても来年の試験にしか役立ちそうにありません。
でも、過去問に執着しすぎる受験生が多いので、あえて書いておきます。
過去問を使うのは、ひととり全分野に目を通し終えた時期です。
それ以降は使わなくても構いません。理解度確認に使ってもいいのですが、絶対ではありません。
使い方は、①どの分野からの出題が、②どの程度のレベルで行われているかの確認です。
もちろん、基礎学習の腕試しも兼ねてよいのですが、こちらはまだ結果が出ないはず。
寧ろ、上記①②をしっかりやって、それ以降の学習の指針を明確にすべきです。
以前にも書きましたが、具体的には、判例付き六法にマーキングしておきます。
どの条文が問われているか?どの判例が問われているか?その頻度は?
これらの点を一見してわかるようにするのです。
自ずと六法をみるときの集中度が変わってくるでしょう。
予備校の指導員(講師と呼ばれる)には「過去問しかいらない」という人もいます。
一方で、その予備校は新作問題の答案練習会への参加や模試の受験を勧めてきます。
これらの問題は本試験の問題とは若干色合いが異なるケースもままあります。
単なる知識を問うだけで、理解力までは計ろうとしていません。
本試験では理解のレベルを問うような問題も出ています(推論問題のことではありません)。
上記のように、予備校製問題はイマイチの側面を持っていますが、「傾向と対策」の面で役立ちます。
こういった分析こそ予備校に頼るべきで、講義はさほど重視しなくてよいと思います。
さて、過去問に話を戻します。
過去問のチェックはせいぜい20年分程度にします。
それ以上やったとしても、重複やもう問われないような問題も多くなっていきます。
腕試しの演習をやりながら、上記の①②をしっかり押さえます。
それができれば、以降は教材を読み返したり、新作問題の演習の際に注意すべき点がわかるはず。
上記の作業兼学習で重要条文と重要判例を特定したら、その理解を完全にします。
そのために使うのは、学習用の判例集であり、学生向けの教科書です。
間違っても予備校指導員が書いたテキストを使ってはいけません。
これを使うのは最初の全体像把握のときだけです。
スタートの段階で、求められる学習の幅と深さを計り、それ以降は脇に置いていい本です。
判例集で事案の概要と判決の要旨、当該判例のポイント解説を読みます。
自分の理解を図などに整理します。
「判例百選」はあまりお勧めできません。学習用に特化していないからです。
良い判例集がなければ、この点も学生向けの教科書で済ませます。
ゆえに判例について丁寧な解説がなされている本を選びます。
間違っても教科書を通読してはいけません。時間が足りないのです。
ポイントを拾い読みし、自分の理解をメモしておくなどします。
民法、憲法、刑法、民訴法はこれで対応可能です。
会社法にかんしては、条文の趣旨や目的を丁寧に書いている本を選びます。
その他の実務的な法律にかんしては、予備校指導員が作ったテキストで済ませるしかありません。
司法書士試験は、学生用教科書を拾い読みし、実務科目はアンチョコ本で対応できるレベルです。
ただし、民法や会社法をアンチョコ本で済ませてしまうと(それでも合格できてしまいます)、
後日になって泣きをみる例がそれなりに多いーとだけ申し上げておきましょう(笑)。
<おすすめの学生向け教科書>
民 法・・・成文堂から出ている近江幸治教授の本(判例解説が丁寧)
・・・日本評論社の「日評ベーシックシリーズ」(薄くて読みやすい)
・・・弘文堂のNOMIKAシリーズ(ただし、家族法以外は改正法に対応できていない)
刑 法・・・日本評論社の「基本刑法Ⅰ Ⅱ」(判例解説が中心)
憲 法・・・有斐閣の野中俊彦教授らの共著「憲法Ⅰ Ⅱ」(説明が丁寧)
会社法・・・有斐閣の前田庸教授の「会社法入門」(説明が超丁寧)
・・・法学書院の丸山教授の「やさしい会社法」(1日で重要条文を読む感覚)
民訴法・・・有斐閣大学双書の「新民事訴訟法講義」
・・・有斐閣アルマ
<よい本だがおすすめしない本>
民 法・・・東京大学出版会から出ている内田貴教授の本(好みであれば合格後に)
・・・新世社から出ている潮見教授の本(合格した後なら読む意味がある)
刑 法・・・上記の日本評論社のもの以外すべて不要(合格後は興味に応じて)
憲 法・・・岩波書店から出ている芦部教授の本(難しすぎる)
会社法・・・弘文堂の神田教授の「会社法」(好みであれば合格後に)
・・・有斐閣の江頭教授の「株式会社法」(厚すぎる。好みであれば合格後に)
民訴法・・・有斐閣の伊藤眞教授の「民事訴訟法」(好みであれば合格後に)
・・・弘文堂の新堂幸二教授の「新民事訴訟法」(興味があれば合格後に)
★ 日本評論社の日評ベーシックシリーズの1冊
債権総論が250頁程度にまとめられています。
このうち、芦部教授の著書については、合格後に日司連から研修前の読了を求められます。
民法では非常にやさしい本が指定されるのに、なぜ憲法だけ難しい本を指定するのでしょう?
芦部憲法はコンパクトで平易な文体で書かれているという表面だけをみているのかも。
あの本は難しいです。読めば読むほど頭を使うので、ためになりますが。