私が登録前に受けた日本司法書士会連合会九州ブロックの研修でのことです。
「決済業務は司法書士の花形業務です」
という説明がありました。
当時の私は決済業務なるものが何であるかすら知りませんでした。
なぜかというと登記業務に特別の興味があったわけではないからです。
その研修で「決済業務」がどういう仕事であるかを知りました。
すなわち、不動産売買で買主X、売主YとXに融資する銀行Bの間で司法書士Aが、
XとYの売買意思及び本人であることを確認し、Bの融資実行にOKを出すというもの。
本人確認部分で司法書士が責任を負う仕組みです。
Aが、YになりすましたZをYだと思い込んでしまうと、大変なことが起きます。
最近の事件としては積水ハウスが数十億円を騙し取られる事件がありました。
この仕事、全然面白みはありません。
法的な知識が必要かといえば、そうでもありません。
売買契約の成立を確認しなければならない点では法的知識が要求されるものの、
多くの場合は、宅建協会の定型的な契約書が使用されます。
当事者が本人であることを確認するという重要な任務ではありますが・・・面白いでしょうか?
そこに法的素養は求められず、専ら注意深さと慎重さだけを求められる。
これを「花形業務」と誇るのはちょっといかがなものでしょうか?
★ 写真は映画「疵」で伝説のやくざ花形敬を演ずる陣内孝則さん
花形敬に関しては、「安藤組外伝 人斬り舎弟」で文太さんが演じています。
ステゴロ(素手の喧嘩)しかやらず、相手を一発で沈めるのが常。
白いスーツがトレードマーク。
伝説の要素がたっぷりの人物です。
ひとつだけ花形といえそうな点があります。
それは報酬です。
売買で所有権移転登記の申請をするだけではありません。
銀行Bを抵当権者とする抵当権設定登記も伴います。
さらに、融資を受けた買主Xが売主Yに代金を払うことにより、Yはその代金でローンを完済。
そうするとYが設定していた銀行Cの抵当権を抹消する登記申請も必要になります。
既にYが引っ越していて住所を移転していれば、その変更登記も加わります。
さらに上記のリスクを負う点について決済の立会料もいただきます。
これで10万円を超える報酬になります。
短時間で効率よく稼ぐことができるのです。
たしかに儲かる点では「花形」でしょう。
私は今でも全然そう思わないのですが。