冬になると肉まん・あんまんを買う人が増えます。
その肉まんを手作りしようーと妻が思い立ちました。
そして、でき上ったのがこれら。
普通に肉まんとして売ることが可能な印象です。
味も問題ありません。美味しいのです。
「調味料(アミノ酸等)」は当然ながら使っていません。
予想以上によくできていました。
「肉まん」というよりは「小籠包」ならぬ「中籠包」のような感じです。
肉まんにはちょっと寂しく哀しい思い出があります。
小学校で「悪ガキ」として著名だったS君が事件を起こしたのです。
「肉まん・あんまん買い占め事件」です。
駄菓子屋さんの店頭でまんじゅうを選んでいる低学年の子を
「ちょっとどけ」
と押しのけ、
「おばちゃん、この(店の)まんじゅう全部ちょうだい」
年少者が買おうとしているのを妨害する意図しかない買い占めでした。
S君はこづかい銭をたくさん持っていました。
育ったのは裕福な家庭だったようです。
買い占めたまんじゅうを一人で食べきれるはずもなく友人に分けます。
それでも余ってしまう。
S君は足で潰し始めました。
彼がなぜそういうことをしたのか?
その頃、私はS君とは親しくありませんでした。
小学生時代に同じクラスになったこともありません。
寧ろ、S君を凶暴な存在として恐れていたくらいです。
小学校1年生のときに、彼はクラスメイトの手を鉛筆で刺す事件を起こしました。
彼のお母さんが土下座して教師数名に謝っていたのを記憶しています。
そういうS君と中学校2年生で同じクラスになったのです。
凶暴な面などまったくありませんでした。
寂しがり屋で周囲から注目されたいばかりに道化を演じている。
悪ぶって「万引きの天才」を名乗り、盗んだ文具をクラスメイトに配るなどしていました。
豊富なこづかいで買っていたにもかかわらず「盗品だ」と言っていた彼。
当時、私は「こいつ、すごく寂しいんだろうな」と感じていたのです。
でも、その原因を想像するには幼すぎました。
卒業後は進学せずに就職しましたが、そこを辞めて行方がわからなくなりました。
彼も60歳になっています。
どうしているのか?
妻が作った肉まんのおかげでS君を思い出すことができました。
今なら彼の寂しさを理解できるのですが、会う機会はありません。
綺麗で強気な奥さんの尻に敷かれ、相変わらずおどけて周囲を笑わせている。
そんな想像をしています。そうあって欲しいという願望を込めて。