司法書士は、法律関係書類作成の専門家とされています。
それは、イコール法律の専門家なのか?
この点は微妙ではないかと私は思っています。
それも、かなり微妙な印象です。
2つのどこに違いがあるのか?
法律関係書類作成の専門家である司法書士Aさんについてのお話です。
Aさんは、登記の申請書類を作ることに長けています。
マニアックな知識を要する書類です。
法務省のホームページに多くのパターンが公開されています。
けれども、初めて接する人は
「なんじゃ、こりゃ?」
というような書類です。
作り方は、不動産登記法や商業登記法の試験勉強で身につけます。
合格後は、ソフトを購入し、そのソフトが書類をほとんど作ってくれます。
レアな書類は、実務書と呼ばれるマニュアル本を使えば大丈夫です。
この実務書を読むくらいには法律の知識が身についています。
裁判所提出書類の作成は、受験生時代に学ぶものではありません。
受験科目について学べば、後日は実務書を読むだけの知識が身につきます。
だから、Aさんにとってはそう難しく感じられません。
そして、これらの業務は、ある程度はパターン化されています。
イレギュラーなケースは少なく、それらは実務書に載っている内容で対応可。
一方、Aさんは民法についても受験用テキストくらいしか読みません。
合格後はそれらもさほど参照しなくても済んでいます。
会社法や民事訴訟法についても同様です。
日々実務をこなすのに忙しく、本格的な法律書をひもとく時間はありません。
読む時間がない以上、買うこともありません。
著名な民法学者の名前なども知る機会がないままです。
裁判所や弁護士事務所には必ず置いてあるようなコンメンタールも買いません。
刑事系の本などみたこともありません。
社会的行為論? なにそれ? というくらいに刑法には疎いのです。
刑事訴訟法など試験にも出ないのだから条文をみたこともありません。
実務で使うことが想定されていないからです。
判例をじっくり読むこともありません。
これは受験生時代からそうでした。
判例の結論さえ知っていれば、試験はなんとかなってしまいます。
合格後も判例を使って事件解決を考えるような業務には出会いません。
最近は、条文を読まない日の方が圧倒的に多くなっています。
実は、このAさんが司法書士一般の姿なのです。
司法書士に期待されるのは、法律書類作成能力。
さほど、法的な思考力を発揮するチャンスはもらえません。
そこそこの知識はないと困るのですが。
私は、ある日のこと、「司法書士は中途半端な資格だ」と口にしました。
横にいた別の司法書士からは、それこそ「いや~な顔」をされました。
でも、法律の専門家といえる実質を具えていないような気がするのです。
だから「先生」と呼ばれることには、いまだに違和感があったりするのでした。
★ 右は実務書です。債務整理に関してはひととおり書いてあ,これを参照する司法書士は多いです。
左は本格的な体系書。この本は通読よりも辞書のように使うべき本です。
著者は民訴法の大家である伊藤眞教授 ≠ 伊藤塾の創始者伊藤眞弁護士