福岡県糸島市 司法書士 ブログ

法律家?lawyer?

「街の法律家行政書士」はいけないのか?

いきなりある法律事務所のサイトからの引用です。

「行政書士が『破産などの債務整理』『交通事故』『離婚相続』『相続相談』について、

法律や実務の解説をしたり、Q&Aのページを持つというのは『弁護士法違反してますよ』というようなものです。

行政書士は行政官庁への書類の代書ができるだけで、司法官庁への代書は許されていません。

実体験はありません。裁判所は、弁護士と司法書士からたたかれますから、行政書士の関与に神経質になっています。

もちろん、法律や実務の解説をしたり、Q&Aのページは『引用』でしょう。間違っても詳しいと思ってはいけません。

なお、裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)15条には、

裁判員の職務に就くことができない人が列挙されています。

法律の素人を刑事裁判に参加させる手続きですから、裁判官、検察官、弁護士は当然なれないという規定があります。

司法書士も、法務大臣が実施する簡裁訴訟代理能力認定考査で認定を受けた司法書士(認定司法書士)には

民事訴訟の代理権がありますから、やはり『法律の素人』ではありません。ここで、はっきりするのが行政書士です。

行政書士は、裁判員法に『不適格者』として排除の対象となっていませんから、

法律の素人として裁判員になれるのです。

つまり、行政書士は、はっきりと『法律の素人』と法律(裁判員法)に記載されていることになります。

『街の法律家』は『過大広告』で弁護士会がいくら 指導をしても改めようとする気さえないようです。」

かなり行政書士を嫌っているように思われる内容です。

さて,行政書士が「法律家」を名乗るのは間違いでしょうか?

私は,この法律事務所の見解のように目くじらを立てる必要はないと思います。

行政書士の先生方の個別の能力は様々ですから。

司法書士は“lawyer”

同じような問題は我々司法書士にもあります。

司法書士は「法律家」でしょうか?

まずは英語表記を“lawyer”とすることの是非を考えます。

英語が得意な方はご存じかもしれませんが,“lawyer”は弁護士を意味しています。

ある英英辞典では以下のように説明されています。

someone whose job is to advice people about laws, write formal agreements, or represent people in court

これを読むかぎり,行政書士は“lawyer”たりえません。認定司法書士は含まれる可能性がまったくなきにしもあらず。

しかし,やはり弁護士のことを意味していると解するのが妥当でしょう。

認定司法書士の in court の業務は極めて限定的です。

“lawyer”と名乗ってしまうと誤解を招きかねません。その誤解により迷惑をかけるおそれもあります。

だから私は自分を“lawyer”であるとはいいません。

せいぜいが,英国でいう“solicitor”の「モドキ」くらいだと思います。

この点,日本司法書士連合会は,英語表記としては“shiho-shoshi lawyer”としています。

これにしたがうと司法書士は“lawyer”ではないことがわかります。

責任を負えるだけの学識があるのか?

結局のところ,行政書士であれ司法書士であれ,法律に関する発言に責任を持つことができるかどうか,

反対に考えると,相談者が信頼を寄せても問題がないだけの学識を持ち合わせているかどうかが

問われているように思います。この点は弁護士でも同じです。司法試験に合格したという実績が

相応の学識を担保してはいますが。

たしかに「法律家」と名乗るのはカッコいいのかもしれません。

ほんらい弁護士しか名乗ることができない「法律家」や“lawyer”を名乗りたい気持ちはわからなくもありません。

しかし, 仕事の性質上,団藤重光博士を知らないのは仕方がないにせよ,

我妻榮博士や兼子一博士を知らない(その著作に触れたことすらない)レヴェルの司法書士が

「法律家」を名乗るのはあまりにもおこがましいように思います。

同様に法律書(実務書ではありません)を読んだことがない「法律家」という存在もあり得ないのではないでしょうか?

その程度で法律に関する「見解」を語るのはかなりの冒険家です。大胆不敵というべきでしょう。

実際には,「条文にはこう書いてあります」くらいしか回答できないかもしれませんが。

私は法律書にかんしてはかなりの量を読んでいます。それは実務書よりも法律書の方が圧倒的に面白いからです。

でも「法律家」と名乗るつもりはありません。

そこまで厚かましくないので。

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