「舞いあがれ!」が終わりました。
概ね好意的な評価が多かった作品のようです。
前作の「ちむどんどん」は酷評されまくりました。
二つの作品をみた私の感想は・・・
まず、主役を演じた女優さんについて。
これは、間違いなく黒島結菜さんが大器でしょう。
瞳の微妙な表現ができるうえに、セリフ回しもうまい。
一方の福原遥さんは、かわいいのですが、主役としての立ち姿が際立ちません。
アイドル女優的な雰囲気は最後まで変わりませんでした。
今後の作品に期待したいと思います。
私が注目するポイントの第一は「目力」です。
福原さんは最後まで優し気でかわいい目でした。
一瞬でも視聴者が目をそらせなくなるような視線を飛ばすことがあれば・・・
朝ドラで松嶋菜々子さんをみたときは、その視線に捕まったような感じになりました。
次は登場人物です。
いずれのヒロインにも兄がいました。
「ちむどんどん」では、頭はちょっと弱いけど限りなくお人よしでルーズな兄。
「舞いあがれ!」では頭脳明晰のエリートながら性格に難がある兄。
世間的に好かれるのは前者のはずですが、大いに嫌われました。
なぜでしょう?
母親を比較すると、「ちむどんどん」ではダメな長男を最後まで信じようとします。
母親が信じてやらなかったら誰が信じてやるのか?
こういう話をよく耳にするのですが、母親の教育がなっていないと非難されました。
これまたなぜでしょう?
一方の「舞いあがれ!」ではどうだったか?
会社の苦境のさなかに経営者である夫が死にます。
妻である母親が後を継ぐのですが、娘を道連れにします。
娘が「私も一緒にやる!」と言い張っても、わざわざ苦労させるでしょうか?
しかも、かなりの費用をかけて夢であるパイロットの資格を得た娘です。
「あんたはパイロットにならんと。それがお父ちゃんの夢やったんや」
こう言いそうなものですが、娘の経営参画に強い抵抗はしませんでした。
肝心のヒロインはどうかといえば、「ちむどんどん」は思いつきで行動すると非難されました。
「舞いあがれ!」では大学を退学し、両親に学費の援助を受けてパイロットの道へ。
なのに、意外にあっさりと夢を諦めます。
一見フラフラしているのはいずれのヒロインも同じ。
なのに舞ちゃんには応援の声が多かったようです。
こうしてみると、どっちもどっちの作品で、ありきたりの朝ドラだったのです。
では、非難を受けた「ちむどんどん」とそうではない「舞いあがれ!」の違いは?
これは、ネットで最初にどういう評価がなされたかだけだと思います。
「ちむどんどん」については叩くことこそ正しく、それがトレンドだという印象づけがなされました。
その「ちむどんどん」を叩いた以上、次の作品は
「ほら、こっちはいい作品だ」
と「舞いあがれ!」が褒められる扱いなったのでしょう。
そして、比較対象として「『ちむどんどん』はひどかったよなぁ」という話をするわけです。
視聴率では「ちむどんどん」が若干上回ったというのも面白い点です。
おそらく誰もが気付いているのです。
「朝ドラはこういうものだ」
ワンパターンなのです。それが安定を好む視聴者層に喜ばれるのです。
たまに「あまちゃん」のような変化球を投じられると、世間はなぜか絶賛する傾向があります。
あの作品も朝ドラのワンパターン路線でしかなく、単に小ネタで笑わせた程度です。
「あの薄汚ねえシンデレラの娘!」と古田新太さんが放ったセリフには大笑いしました。
ヒロインの母親を演じる小泉今日子さんが出演した民放のドラマをネタにしているのです。
私はすぐに気づいたので笑えました。が、誰もがわかる話でもありません。
こういう「わかる人にはわかる。ね、面白いでしょう?」というような作り方は好きではありません。
脚本家の自意識が表に出過ぎています。
でも、今はそれをもてはやす傾向が強いのかもしれません。
表層的な笑いでドラマをつなぐ。これで事足りる時代のようです。
それに比べると「舞いあがれ!」は志がやや高い作り方になっていたと思います。
多くの人が夢を共有し、それが実現するのですから。
「ちむどんどん」はこの点では伝え方が下手だったな、と思います。