福岡県糸島市 司法書士 ブログ

新司法書士試験?と司法書士のこれから

提言された改革案

一昨年くらいだったと思いますが、「新司法書士試験」の提案が雑誌に掲載されました。

提案したのは「司法書士養成制度検討会」なる集団らしいのです。

読んだものの、詳しくは覚えていません。

① 法科大学院修了者

② 司法試験予備試験合格者

③ 裁判所事務官等の経験が10年以上の者

に試験科目の一部について受験を免除するというもののようです。

また、

④ 試験科目から刑法を外す

という提案もなされていました。

この提案は「改革案」として素晴らしいのでしょうか?

 

提言した「司法書士養成制度検討会」は大学教授、弁護士、司法書士らからなる「有識者会議」です。

ちょっと失笑してしまいました。

もっとハッキリ書くと、「こいつら大丈夫か?」と感じたのです。

その理由はー

① 法科大学院修了者に一部の試験を免除するほどの学識があるとはいえないこと

② 経験10年以上の裁判所事務官等については、今も任用制度があり、それによれば十分

の2点です。

①については、法科大学院修了者と話せばわかります。

本当に院卒?という印象の人がかなりいます。知識はそこそこですが、理解が浅いというか・・・

法律を学ぶための基礎的な教養が足りない人が少なくありません。でも「法務博士」です。

司法試験予備試験合格者については、その学識は十分だと思います。

しかし、司法試験においては「法科大学院修了者」と同等の扱いです。

それゆえ、ここでも同じ扱いにするしかありません。

予備試験合格者だけ優遇すれば、

司法試験予備試験合格者>法科大学院修了者」

であると司法書士試験制度において認めることになります。

さらにー

③ 法律基礎科目である刑法を外すなど、法律家が考えるレベルの提案ではない

のです。

以上からは「司法書士養成制度検討会」の提言に賛成する理由を見出せません。

望まれる試験制度の改善

でも、私も今の試験制度がベストであるとは思っていません。

寧ろ、あまりよくない試験だとさえ思っているのです。

法律の基礎的な理解をしっかり試す、というよりは知識偏重型の出題だからです。

仮にも「法律家」の端くれであると名乗りたいのであれば、もっと基本を重視しましょうよ。

こう思うのです。

表面的な知識だけで合格できてしまう今の試験は、単なる物知りを輩出しているだけ。

法務省がそれで事足れりとしているのであれば、司法書士は所詮その程度ということです。

司法書士が「法律家」っぽく振舞いたいのであれば、基本重視の試験に変えるべきでしょう。

アンチョコ本だけで合格してしまう受験生がかなり多い現実をどう変えるか?

この点を議論すべき時期が到来しているような気がします。

どうする?

というわけで、ちょっと感じていることをそのまま「私案」のように書いてみます。

まず、憲法・民法・刑法に関して基本的な理解を試すような出題の一次試験を実施。

その合格者には二次試験として、商法・会社法・民訴法・民執法・民保法・刑訴法を課す。

登記法2科目については、合格後の研修で学ぶか、試験を課すかは検討を要します。

特別研修を廃止し、二次試験の段階で要件事実論に関する認定考査に近い試験を課す。

供託法・司法書士法を試験科目から外し、これらは合格後の研修で学ぶ。

法律基礎科目の十分な理解がない人には二次試験まで受けていただく必要がない。

だから試験を2回に分けました。

供託法は事実上は供託規則からの出題であり、専ら知識だけを問うもの。

実務に就く前の研修で学べば十分です。

司法書士法も倫理面を含めた研修に集約すれば足りるでしょう。

司法書士試験段階で要件事実論の試験を行うので、合格者は全員認定司法書士です。

こうする理由は、相談業務においては要件事実論的思考が不可欠であること、

上記した「法律家」の端くれを名乗る以上は、当然に要件事実論の素養が必要だからです。

 刑事訴訟法に関する井上正仁教授の論文集

  基本的人権について深く考える意味で刑訴法の学習は非常に意義あるものだと思います。

憲法・刑法重視に刑訴法を加える理由

上記の「私案」を異様に感じる人もいるかもしれません。

憲法・刑法など司法書士実務では使わない。況して刑訴法なんて無縁だ。

こういう批判がありそうです。

しかし、憲法と刑法は、民法同様に法律基礎科目です。

特に、人権の擁護者たらんとする以上は、憲法を深く学ぶべきです。

では、刑法は?そして刑訴法は?

これは、今後の司法書士業務の展開との関係です。

司法書士は、家事審判に関する代理権獲得を目指そうとしているといわれます。

問題は日弁連が容認するかどうかです。

日弁連が容認しそうな司法書士業務の拡大を考えるとー

それは簡裁の刑事事件弁護です。

弁護士からみてカネにならない事件が多数です(それどころか赤字に・・・)。

いわゆる国選事件だらけなのです。

この点を考えると、日弁連が「市場開放」しやすいのは簡裁の刑事事件です。

ゆえに、そこを司法書士が担うということが家事事件の代理権獲得よりも容易でしょう。

そうすると刑法と刑訴法の素養・知識は必要ということになるのです。

家事事件の代理権

では、家事事件の代理権獲得はどうすべきか?

司法書士の家事事件に関する書類作成業務のほとんどが後見等開始の審判の申立事件です。

そして、それはまさに代理人的な仕事の仕方になっているのです。

それならば、今のままでも十分なのではないか。

放っておいても、書類作成業務はどんどん司法書士に回ってくるでしょう。

というわけで、この分野は、今の実績をさらに積み重ねるべきです。

そして、司法書士業務そのものの印象を強める方がよいのです。

よりラディカルに

さらにさらに激しいことをいえば、司法書士と弁理士を廃止するのはどうでしょう?

すべて弁護士業務にしてしまうのです。

諸外国はそういう制度が多いのです。

いちいち司法書士や弁理士を置いていません。

登記は弁護士業務だし、特許申請も弁護士業務です。

試験をすべて中止し、今後は司法試験に合格してくださいーで十分かもしれません。

増えすぎた弁護士問題も解決です。

なお、行政書士と海事代理士も当然廃止です。

今の有資格者は失職?

さすがに、そこまではできませんね(笑)。

 

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