福岡県糸島市 司法書士 ブログ

憲法が試験科目

司法書士試験受験生は憲法に興味がない?

司法書士試験では憲法が試験科目になっています。

択一式で3問出題されるだけですが, 試験開始の第1問めから第3問めが

憲法で, 順番に解く場合は憲法の出来不出来がその後の試験に影響する

かもしれません。 民法から解く人が多いのは, 受験生は概ね民法を得意

としているからでしょうか。

私は憲法が得意なので, 憲法から順番に解いていきます。  傲慢なよう

ですが, 誤答するとは自分でも思っていないので,  まずは三連勝でスタ

ートという考えです。

司法書士試験の憲法は, 人権関連の判例をよく読み, 統治機構にかん

する条文を知っていれば, 解答に困るような問題は出題されません。

1980年代後半の司法試験択一式では国語の問題というイメージの出

題やパズル的な出題が多く, 憲法で苦しむ人が多かったのですが,

司法書士試験の出題は一貫して素直です。

しかし, 司法書士試験の受験生は憲法を得意とする人は少数派のよう

に言われています。 理由は勉強に時間をかけないからでしょう。 3問

しか出ないし, 将来的に実務に直結しない。  司法書士試験の受験生が

憲法に興味を示さないのは当然かもしれません。

憲法が出題されるのはなぜ?

では, 憲法の学習は軽めにしておき, 民法や会社法に時間を割くべき

なのでしょうか?たしかに, 民法・商法・会社法で29問です。 ここに資源

を投入することが合格には必要だということがいえます。

ですが, 私は憲法に一定の時間をかけた方が, 結局は民法等の科目の

理解にかんしても早道になると思っています。

その理由は, 民法にせよ会社法にせよ, 最終的には権利を確定し守る

ための法律で, その基本は憲法の基本的人権の保障にあると考えて

いるからです。 憲法を学び, 人権に対する感覚を磨いておいてこそ

民法で私権をいかに守るかという意識につながるのではないかと考え

ています。 民法を学べば会社法や不登法の学習には直接的に役立つ

ことを実感できるかもしれませんが, 憲法を学んでも民法の理解が

深まったという実感は湧きづらいと思われます。 が, 憲法学習を通じ

て磨かれた人権感覚は, 各条文の存在意義や立法趣旨を自分なりに

咀嚼していくうえで欠かせない。 私はそう思うのです。

司法試験でも憲法は重要科目です。 たとえば, 予備試験でも口述式

において単一科目として扱われます。刑事系, 民事系といったくくりが

される他の科目とは異なる位置づけです。

芦部憲法は難しい

芦部信喜教授は既に亡くなられましたが, そのご著書である「憲法」

(岩波書店)は今も最高の基本書として学生や司法試験受験生が

使い続けています。司法書士合格者を対象にした研修でも必読書と

いう指定がされ, 購入を勧められます。 私は買いませんでした。

なぜなら, 既に買って何度も読んでいるからです。 私は初版を

持っていて, 28年前に出版されて以来, ずっと芦部憲法と格闘して

います。はっきり言って難しい本です。比較的薄く, 平易な文体で

書いてあるために,とっつきやすさがあり, 一読すると「わかった気」

になってしまうのですが, 凝縮された含蓄ある文章であることに気づ

くのは, 再読,再々読というように繰り返し読んでからになると思います。

この本を読みこなすには同教授の「憲法判例を読む」や場合によっては

「憲法制定権力」などの論文集にも目を通さなければ無理ではないかと

いうのが今の実感です。

連合会がこの本を入門書として推薦しているとすれば, とんでもない

と思いますが, おそらくは憲法に関しては「この本を読んで理解できる

くらいになってね」という趣旨での推薦でしょう。 尤も, 民法に関して

は有斐閣のSシリーズや潮見教授の「民法(全)」が推薦図書になって

いて, 本格的な体系書ではなかったりするのですが(笑)。

↑1993年購入の初版本には書き込みがいっぱいです

読みやすく理解しやすい憲法の本

芦部憲法は上記のように難解で, いきなり飛びつくのはどうか?

私は, 芦部憲法よりも有斐閣から出ている「憲法1」「憲法2」(高橋

和之・高見勝利・野中俊彦・中村睦男)が芦部憲法に比べて判例を

多くとりあげ(芦部憲法は絞り込んでいる),丁寧に説明しているの

で, 量的には多いようでもスムーズに読むことができるのではない

かと思っています。

これから司法書士試験を受験しようとする人, 受験していても合格

になかなか到達できない人は,  ためしに2週間だけ憲法を集中的

に学んでみてはどうでしょう?かなり効果が出ると思いますが, そ

れに気づくのは合格間際くらいになるでしょう。

なお, 芦部憲法は読むべき本です。葦編三絶に値する内容をもっ

ています。 その前に上記の共著の本を読んでおくと芦部憲法の

素晴らしさが実感できるはずです。読むのは合格後でOKです。

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