特定危険指定暴力団である工藤會の総裁に対する判決の報道の話です。
控訴審で福岡高裁は、第一審の死刑判決を破棄して刑を無期懲役にしました。
漁協元組合長(元暴力団組長)殺人事件については無罪と判断されたことによるのでしょう。
第一審は「推認」という言葉が多用された異様な内容でした。
判決の原文を読まずとも、推認だけの積重ねで生命を奪う判断をする異様さを感じました。
今回は、殺人未遂で無期懲役です。
量刑相場から考えると、私などは「重めだな」と感じました。
しかし、ネット上の反応を見ると、判決を非難するもので溢れていました。
中には
「国民感情に配慮した判決をすべきだ」
という恐ろしいものまでありました。
国民感情を踏まえて死刑選択・・・それでは法治国家ではなくなります。
死刑が無期懲役になったというだけで裁判所を悪の巣窟のように非難する。
そもそも誰も事実認定がどのように行われたかを知りません。
報道ではそこまで詳しいことには触れないからです。
結果だけみて、気に入らないと大騒ぎ。
ハッキリ言って「馬●」ではないかと思いました。
刑事訴訟においては、綿密な証拠の吟味を経て細かく事実を認定します。
人の自由を奪ったり、ときには生命を奪う以上、こういう作業は民事よりも精緻になるのです。
「推認」ばかりだった第一審よりも細かい検討があったと「推認」できそうです。
でも、世間は死刑を求めるのです。
事実がどうであるかよりも、やくざの親分で悪い組織だから殺せ。
これが我が国の法感覚だとしたら、かなり問題でしょう。
我が国では法に関する事項といえどもムードで世論が形成される。
本当に「先進国」なのか?
ネット社会になり、ムードだけで世論が形成される傾向は強くなるばかりであります。
★ 映画「日本の首領 やくざ戦争」の中島組若頭辰巳周平を演じる鶴田浩二さん(左)と中島組長役の佐分利信さん。
中島組長のモデルは山口組三代目田岡一雄氏であり、辰巳若頭のモデルは山口組若頭の地道行雄氏。
この地道若頭の盃を受けたのが、上記事件の殺人事件の被害者となった方であります。
殺人事件の背景には昭和20年代に起きた別の殺人事件があり、手打ちができないままに・・・ということのようです。