世間の耳目を集める犯罪が起きると、「刑罰が軽い!」という声が高まります。
現に、いくつかの犯罪については重罰化が進みました。
厳罰を望むーこの感覚は「正義」に根差しているのでしょう。
でも、厳罰化することによって犯罪を抑止できているのか?
残念ながら、それはまったく実証されていないのです。
寧ろ、刑事政策の分野では厳罰化は犯罪抑止に効果がないとされています。
アメリカでは州によって死刑が存置されていたり廃止されていたり。
では、死刑を廃止した州よりも存置する州の方が重大事件の発生率が低いのか?
全然変わらないのです。
性犯罪にしてもそうです。
たしかに、卑劣な犯罪に厳しい処罰をもって臨むことには意味があるでしょう。
でも、再犯を防ぐことに繋がっているとはいえないのです。
長い拘禁の末、シャバに出た性犯罪者は再び性犯罪に手を染める傾向があります。
単に塀の向こうに送り込んでいるだけでは意味がないということです。
性犯罪は一種の病であり、治療が必要というのは国際的には定説です。
我が国はどうでしょう?
性犯罪に限らず、塀の向こうに送って「これにて一件落着!」ではないでしょうか。
いくら厳罰化を進めても、これでは再犯者が減りません。
以上から厳罰化は一種のパフォーマンスに過ぎないという結論になります。
厳罰化運動をする人たちが「正義」のアピール。
これに世間が付和雷同。
議員センセイの「有志」が厳罰化を打ち出し、国会で法改正。
一件落着!
世間も拍手喝采。
今の流れはこういう印象です。
根本的な犯罪抑止策を講じず、更生・社会復帰の手助けもせず。
手助けどころか、シャバに戻った元犯罪者を白い目で見るだけ。
この点は、我が国が欧米に比べて「ダメな国」かもしれません。
左派マスメディアが「日本はダメな国!」と大騒ぎできる格好のネタです。
でも、全然騒ぎません。
ウケないのでしょうね。
それどころか、反対に嫌われることを恐れているのでしょう。
それくらいに厳罰化は世間が喜ぶのです。
朝ドラ「虎に翼」で当時の少年法改正の問題がとりあげられました。
今も社会は同じことを繰り返していませんか?
あのドラマにはこういう皮肉な面もあるのでした。