福岡県糸島市 司法書士 ブログ

信託は司法書士業務か?PART2

最初に結論

最初に結論を示すのは法律を生業とする者の手法として正しいように思います。

結論が出るまで延々と駄文を読まなくて済みます。

さて,結論としては,司法書士が信託設定支援業務を行う法的根拠は現時点では存在しません。

この問題については10年くらい前からかなり論じられてきたようで,

同期合格のY先生のおかげで渋谷陽一郎氏の論文を読むことができました。

同時に検索していく過程で金森健一弁護士の論文も読んでみました。

いずれの論文にも司法書士法3条および同法施行規則31条には信託設定支援業務が該当する業務は存在しない,

ということが書かれていました。渋谷氏の著書「民事信託の実務と書式(第2版)」の第8章でも論じられています。

この点については同期合格のS先生や先輩司法書士のI先生ともチャットで話したのですが,

結局,誰も法的根拠を示すことはないままに終わっています。

現実にどう対処するか?

しかし,民事信託にかんしては司法書士がフロントランナーとなり,その利用が拡大しています。

法的根拠はないにせよ,各都道府県の司法書士会で信託にかんする研修を実施したりしています。

現実に起きている事態に法整備が追い付いていません。

この場合に我々司法書士はどう対応すべきなのか?

1 現実に信託のニーズがあり,司法書士が組成に関わっている既成事実を踏まえて積極推進する=現実型

2 ニーズがある以上は対応するが,法的根拠を欠く以上は積極推進はしない=受け身型Ⅰ

3 原則として法的根拠がない以上は依頼を受けないが,後見等の補助的手段で使える場合は例外=受け身型Ⅱ

4 ニーズがあっても法的根拠がないのだから依頼を受けない=法的根拠原理主義型

私のスタンスも上記の各先生とのやりとりで固まりまして,上記が基本になります。

尤も,その場合でも委託者と受託者の双方から委任を受けて契約書を作るようなことはいたしません。

これは明らかに双方代理であり,利益相反の問題が生じます。

また,委託者と受託者との間で成立した契約内容を法律的に整序して契約書にする仕事は行政書士の独占業務です。

司法書士としてやるのはちょっと控えたいかな,と思います。

後見支援信託の説明とかそのあたりが中心になるという感じになりそうです。

問題の解決方法

この問題の解決には,司法書士法施行規則31条の早急な改正が必要でしょう。

我々は法律を生業としています(「法律家である」という人ももいるでしょう)。

そうであれば,法律には忠実でなければならず,条文を超絶拡張解釈するような姿勢は許されません。

今の条文には根拠がない以上,慎重に対応しなければならないということになると思います。

そして,社会のニーズに応えていくためにも司法書士が根拠をもって信託設定支援業務を行える環境を作る。

これが先決であり,喫緊の課題ではないでしょうか。

今,信託のニーズに応えて仕事をしている司法書士の努力を無駄にしない対策を講じなければならないでしょう。

信託については,弁護士による信託分野の参入も多くなっておいます。

そうすると,いずれ日弁連との間に軋轢が生じる可能性があります。

そのときに弁護士側は法的根拠論を持ち出すでしょう。

そういうリスクが存在し,問題が生じたときに結果的には依頼者に迷惑をかける可能性がある以上,

当面は慎重な取り扱いをしつつ,環境整備を急がねばなりません。

これからの司法書士の業務拡大には家事事件の代理権獲得以上に信託の法的根拠問題解決が望まれます。

なお,中には「信託は非常に複雑で難しいから避けている司法書士が多い」という人(異業種)もいます。

そこまで難しくはありません(笑)。

司法書士試験に合格するくらいであれば理解可能かつ対応可能な内容です。

勉強だけはしておくべきだし,その勉強は結構楽しかったりします。

 

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