以前のことですが、姪に「おじさん、お笑いは何が好き?」と訊かれたことがあります。
私が「どれも嫌い」と答えたところ「どうして?」と重ねて問われました。
答えは簡単です。
「おもしろくないから」
姪は「ええっ?おもしろいよ!」と言いました。
私は答えました。
「おもしろいかおもしろくないかは人それぞれだからね。おじさんにはおもしろくないんだよ」
本当は「おじさんの方がずっとおもしろいんだから」と言いたかったのですが。
実は、最近の笑いには毒がなく歯ごたえがありません。
表面的にゲラゲラと笑えても後に残るものがないのです。
だからお笑い番組を一切みなくなりました。
ドラマも同じです。最近のドラマはみるに堪えないような質になりました。
俳優に瞬間芸のような演技やどうでもよい笑いをとるような仕草をさせます。
それに比べると昔のドラマは人間の本質を探ろうとするような脚本・演出がみられました。
リメイク作をみても唐沢寿明さんが主演した「白い巨塔」はかつての大映ドラマみたいでした。
前作に比べて格段に軽~い作りになっており、登場人物の内面を描きません。
セリフの面白さや大袈裟な仕種に表情で視聴者に媚びているように感じました。
「ね、おもしろいでしょ?」と。
それで、今はすっかり民放のドラマをみなくなりました。
NHKのドラマにも同様の傾向が強まっています。
あり得ない映像をCGで挿入し、瞬間的な面白さを追求している作品が増えました。
それでも、たまに「これは!」と思えるような作品に出会えるのが救いです。
BSプレミアムの「生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔」は特筆できる仕上がりです。
主役の舘ひろしさんは今年72歳、浅丘ルリ子さんは81歳を迎えます。
ほかにも村田雄浩さんは62歳、泉谷しげるさんは74歳、寺泉憲さんは75歳になる俳優さん。
ほかに女性では真矢ミキさんが58歳、そして濱田マリさんが54歳。
そして、脇役といえば、この方に頼る傾向が強い石橋蓮司さんは81歳になるのです。
ベテラン俳優がしっかり演じなければ重厚な作品を作ることは難しくなったのでしょうか?
この作品の中では蓮佛美沙子さんは31歳ながらベテラン陣と互角に渉り合う演技が光っています。
これは一つの救いかもしれません。
恋愛についても性的なものを描きません。
クレームを恐れて変な放送コード(つまり過度の忖度・配慮)で自主規制しているようです。
恋愛と性は切り離せません。性を描かないために嘘っぽさに溢れた作品になっています。
誰でも性の問題には直面するのですが、ないことにしたいのでしょうか?
暴力シーンもなくなりました。
人は生き物であり、暴力への衝動を常に内包していることを認めたくないのでしょうか。
争いをやめられず、相手を傷つけることで勝利を味わう―生き物である以上は宿命です。
これを「子供がマネをするから」などというもっともらしい理由で描きません。
でも世の中からは暴力はなくなりません。
重厚な人間ドラマを味わえたNHKの大河ドラマも変質しました。
異常なばかりの「主人公推し」。主人公のよい面だけを描こうとしています。
結果的に誰もが愛し敬うスーパーマンやスーパーヒロインが生まれ、リアリティが失われます。
以上のように、最近のドラマにはリアリティがなく説得力に欠けるのです。
それらに貴重な人生のひとときを費やすようなことはできません。
こういったドラマを世の中は求めているのでしょうか?
でもどのドラマも視聴率は大したことがありません。10%程度で及第点がつくのです。
ネット配信などがあるからリアルタイムの視聴率には意味がないという意見もあります。
しかし、本当に面白ければ、リアルタイムでみたいはずです。
みずにはいられない。そういうドラマを作ることができていないということではないでしょうか。
というわけで、古い映画やドラマをDVDで視聴するという私の現状は変わりそうにありません。
★ 直近で購入したDVDは「脱獄広島殺人囚」
かなり面白い作品です。
自由を渇望する主人公に共感できるかどうかはみる人次第です。