私の仕事の中で、そこそこ多いのが債務整理。
特に、高齢者の債務整理をよく受任します。
その中で、
「ここまでやるか?」
といわれたケースを紹介します。
AさんのX社に対する債務は18万円ほど。
ただし、年金は国民年金の額くらいしか受給していません。
現在はある施設に入所しており、認知機能には問題はありません。
ほんらいなら生活保護を受給すべきところですが、受給していません。
ある程度の預金をお持ちなのです。
施設へは行政による「措置入所」で入ったという事情がありました。
X社は既に確定判決を得ています。
しかも、一度は強制執行を申立てていました。
その際、X社は36万円の債権を二分し、各18万円について甲銀行と乙銀行に強制執行。
乙銀行にはAさんの口座は存在せず空振りに終わっていました。
その一方で、甲銀行にはAさんの口座があったため、18万円を回収。
結果的に、債権残額は18万円となりました。
X社は、第一回目の強制執行でAさんの口座の所在を掴んでいます。
改めて甲銀行に対し、残額についての執行を申し立てれば回収できる。
減額交渉などに応じる必要はない。
こういう状況でした。
Aさんは医療費などで余裕資金が必要な状況。
手元の預金を減らさずに済ませたいのです。
私は、「ダメ元」でX社と交渉しました。
Aさんの事情を説明し減額をお願いしました。
「端数(18万1234円のような額の1234円のこと)を落とすということですか?」
X社の担当者が私に訊ねます。
「いえ、先頭の1の字を落としてください。さすがに免除とまではいえないので」
「え?じゃあ10万円カット・・・という意味ですか?」
「はあ、恥ずかしながらそういうお願いであります」
こういう恐ろしいような交渉をする司法書士はいないのかもしれません。
電話の向こうで担当者さんは息を飲むようなことがありました。
で、X社の社内稟議を経た結論は・・・
「事情はよくわかりました。でも10万円カットはさすがにできません」
「まあ、そうですよね」
「ただし、支払額を10万円にするということでどうでしょう?」
私は8万円強のカットを勝ち取ったのでした。
X社は私を無視して強制執行を申し立てれば、甲銀行の口座から確実に全額回収できたのに。
Aさんの事情をよく理解して下さった担当者さんのお陰です。
が、これも「ダメ元」で言ってみなければ得られない結論です。
私は、恥を忍びつつも、こういう交渉もしています。
妻がおもしろがって「土下座和解」と呼ぶ方法です。
結果的に依頼者が満足するのであれば、この頭を地べたにすりつけるくらいは・・・
そこをなんとかしてくれた。X社はなかなか度量のある会社だと思いました。
尤も、既回収額で元本については回収できていたという事情もあるのですが。
★ 債務整理を生業にする人がよく使う本
ただし、この本を読んでも交渉のノウハウは身につきません。交渉力は場数を踏むしかアップする方法がないのです。
尤も、他人のノウハウをそのまま盗めば、短時間で力がつきます。盗むことができるかどうか?それはその人の才覚次第でしょう。