「クマソ」と書くと「熊襲」を想像する方が多いと思います。
私や私同様に蝶に関心がある人が「クマソ」と呼ぶのはこの蝶です。
クロマダラソテツシジミ Chilades pandava です。略してクマソ。
私が住む糸島市ではここ10年くらいは秋に普通に見かけます。
かつては迷蝶でした。迷蝶というのは,その地に分布しておらず,風に乗るなどして偶然に飛来した蝶です。
場合によっては飛来した個体(おそらく複数)がそこに存在する食餌植物に産卵して発生することがあります。
発生するものの,多くは南方から梅雨前線に吹き込む風や台風の影響で飛来した蝶ゆえに越冬できません。
クマソの同属のソテツシジミ Chilades mindorus は沖縄以南で散発的な記録があり,発生したこともありました。
クマソの飛来・発生が確認されたのは1990年代です。
その後,2000年代に入って急拡大した模様で,関東などでもよくみられるようになっています。
定着しているのか(越冬できている)どうかはよく知りません。
昔なら徹底的に調査して報文を書き,雑誌に発表したのですが,その種の仕事は後進にお任せです。
当地に定着していなくとも,そう遠くない本土の温暖な地で発生を繰り返し,そこから飛来しているのかもしれません。
「南国からの使者」も今や「秋のおなじみさん」になりつつあります。