私は、年に数回ですが、海外ミステリを大量に読む時期があります。
最近の翻訳は非常にこなれていて読みやすいのです。
一方、古い本は訳文が非常に硬い印象です。
どの翻訳家のものとは書けないのですが、下手くそな日本語に苦労します。
チャンドラーの諸作については村上春樹訳のものが出版されています。
けれども、私は今も清水俊二訳のものが好きです。
村上訳のものは、あまりに村上春樹っぽさが出ているためです。
これは、小説家による翻訳の宿命かもしれません。
海外ミステリは面白いけれど、登場人物の名前で苦労するという声もあります。
人気が高い「木曜殺人クラブ」のシリーズは登場人物がかかれた栞がついていました。
これは便利なので、早川書房はポケミス全般でそうすればいいと思います。
上記のチャンドラー作品に限らず、古典的な作品は新訳版が出ています。
アメリカ本国では読まれなくなったS.S.ヴァン・ダインの「ベンスン殺人事件」も新訳が出ました。
ヴァン・ダインのような本格ミステリは我が国では人気が高いのです。
その一方で、サスペンスやスリラーの名作は新訳が出ていません。
私などはそれらの分野やハードボイルドの方が好きなので、ちょっと残念です。
それでも海外の新しい作品を読みやすい訳で読めるのはありがたいと思っています。
スカンジナビアやドイツの作品なども、そしてインドやアフリカの作品も出版されています。
概ね英米仏のものが中心だった以前に比べ、ミステリについては「多様性」が生まれています。
★ 左は古いハヤカワポケットミステリ(これらの訳文が下手というわけではありません)
右は最近のハヤカワポケットミステリ(これらの訳文は読みやすいです)
表紙デザインは古いタイプが今でも私の好みですが、手がけていた装丁画家が亡くなってしまいました。