「正義」のあり方は人それぞれでしょう。
でも、こういう発言はどうなのか?
「A司法書士は消費者金融の手先になって債務者を訴える代理人をしている。
我々は司法書士として社会正義を実現する立場にある。Aさんは司法書士の
風上にも置けない」
つまり、A司法書士は、消費者金融B社の債権回収を受任しているのです。
B社の委任を受け、債務者Cさんを被告とする貸金返還請求訴訟を提起している。
これはいけないことでしょうか?
また、「司法書士の風上にも置けない」行為なのか?
私はまったくそうは思わないのです。
B社はCさんにおカネを貸しました。
B社とCさんとの間には金銭消費貸借契約が結ばれ、当事者としては対等です。
当事者の一方であるB社は貸金返還請求権を有しています。
Cさんは約束に反しておカネを返しません。
B社の権利が侵害されている以上、B社はその権利を実現しようとします。
その際に代理人としてA司法書士を選任する。
A司法書士はB社の権利実現のために働く。
どこが問題でしょうか?
依頼者の利益を最大化するように努力するのが我々の仕事です。
A司法書士はB社の利益のためにできることをすべきです。
提訴もいいでしょうし、厳しい催告をすることもあってしかるべきです。
これを非難してしまうのは、非難する人なりの正義があるからです。
おそらく、司法書士(や弁護士)は「弱者救済に徹すべきだ」という思いがあるのでしょう。
それはそれで結構だし、その人はその人が思う「弱者救済」に邁進すればよろしい。
たしかに、B社は多くのおカネを他人に貸す会社ゆえ強者かもしれません。
一方で、Cさんがおカネを返さないため、B社は困った状況に追い込まれてもいるのです。
視点を変えれば、弱者と強者は入れ替わります。
そもそも、約束を守らないCさんが「正義」とはいえないでしょう。
私が思うには、A司法書士を非難する人には、思い込みがあるのです。
世の中の「正義」は、自分が考える「正義」しかないのだ、という思い込みです。
司法書士が、こういう思い込みをしているようでは困ります。
本当に公平な立場で冷静に判断できないことになるので。
★ 1979年の映画「ジャスティス」のアル・パチーノ
熱血弁護士を熱く演じました。