「司法書士に依頼があるのは、やはり弁護士よりも安いからですか?」
ある人が私に対し、こういう質問をしました。
私は絶句しました。
平気で失敬な発言をすることもさることながら
「司法書士と弁護士は同じ仕事をしていると思い込んでいるのか?」
と思ったからです。
「こんな人がいるんだ!」
司法書士の仲間内でこの話をすると
「失礼にもほどがある」
「無知すぎて驚いた」
「いやがらせで言っているのでは?」
などの声が出ました。
★ 左から弁護士・弁理士・司法書士の各バッジ
弁護士バッジは純銀製の金メッキで7グラムで司法書士バッジは18金プラチナメッキで5.5グラム。
弁理士バッジは金メッキです。重さはわかりません。正式バッジと略章の2種類があるそうです。
司法書士と弁護士の仕事の範囲は一部で重なるだけ。
そうでなければ、わざわざ資格を分ける意味がないでしょう。
同じ仕事をする資格を「廉価版」と「スペシャル版」にするわけがないのです。
私たち司法書士は地裁では代理人になることができません。
家事事件の代理権もありません。
地裁や家裁の仕事に関しては「裁判書類作成業務」。
依頼者名義で裁判所に提出する書類を作ります。
簡裁では弁護士同様に活動することができます*。
つまり、裁判所の仕事に関しては制約があるのです。
一方で、弁護士は登記申請をすることも可能です。
けれども、これはかなりマニアックな業務。
つい先日も懇意の弁護士さん(20年目くらい)から
「相続財産清算人として相続財産である不動産を売った。登記も自分でしようと思ったけど・・・」
という電話がありました。その後は
「慣れていないのでちょっと・・・先生、お願い!」
ということでした。
彼女が若手弁護士時代からのつきあいです。私が断ることはありません。
「いいですよ。報酬は実費以下というのだけはダメですけど」
マニアックな業務である登記に関しては司法書士の独占状態なのです。
相続財産清算人や成年後見人には弁護士も司法書士も就任しています。
でも、いざ不動産売却となると、弁護士としては契約までは可能でも登記はちょっときつい。
こういうことがあります。
上記のように弁護士と司法書士は業務範囲について実質的に住み分けています。
同じ仕事を安く引き受けるのが司法書士で、高く稼ぐのが弁護士ー爆笑するほかないのでした。
世間では、登記は司法書士で訴訟は弁護士という捉え方が多いです。
司法書士が簡裁において代理人となることができる点を知らない人はまだまだ多い。
紛争に関与することを避ける司法書士が多いためでしょう。
それにしても、冒頭の発言をした人の感覚はちょっと心配です。
司法書士と弁護士の仕事が一緒だと誤解する程度は仕方がありません。
無知で済む話です。
怖いのは、冒頭のような発言をためらわずにしてしまう点。
あちらこちらで失礼な発言を繰り返しているのではないか?
本気で心配してしまいました。
*認定考査に合格した司法書士に限られます。