私が大好きな曲である“You don’t know what love is”はジャズのスタンダードナンバーです。
それゆえ多くのミュージシャンが演奏しています。
ヴォーカルなしの楽器のみの演奏もたくさんあります。
なかでもジョン・コルトレーンの“Ballads”やソニー・ロリンズの“Saxophone Colossus ”,
エリック・ドルフィーの“Last Date”の演奏は素晴らしいものです。
ヴォーカルの名演を挙げるなら・・・“Chet Baker Sings and Plays”です。
チェットのトランペットと歌唱は退廃の極みで深夜に聞くと心に染みわたります。
こういう名演が数々あれど,私が最も愛するのはジョージ・ベンソンのギターと歌によるもの。
“Tenderly”でのベンソンの演奏は最高に澄み渡った美しいもので,チェットが醸し出す雰囲気とは逆。
なぜ,私がこのベンソンの演奏を愛するのか?
アルバム発売当時の1989年にはよくわかりませんでした。
いま思うに,おそらくは自分自身が
“You don’t know what love is”
と言われて素直に受け容れることができる心境だったからでしょう。
ようやく女性不信から抜け出し,妻との真面目な交際が1年目くらいだったころなのです。
女性の“Tenderly”な言葉を信じることができるようになっていました。
このアルバムには他にもスタンダードナンバーとして有名すぎる“Stella By Starlight”や“Stardust”も入っています。
面白いのはザ・ビートルズの名曲“Here, There And Everywhere”もベンソンが見事に料理していること。
ギターテクニックの素晴らしさに加え,ナット・キング・コールばりの美声。
天が二物を与えた好例です。