損保会社に勤務していた頃には雪に起因する交通事故を何件もみました。
事故の報告が入り、保険金請求があるのです。
雪に慣れていない南国の人が、積雪をものともせずに発車!
そしてガードレールに向かって車が滑り、慌ててブレーキ。
車が回転して反対方向を向いた状態で衝突。
そこに後続車まで滑ってきて・・・
みたいなことが何度もありました。
雪でスリップして対抗車輛同士が衝突。
人身事故ゆえ車を脇に寄せて救急車で病院へ。
その間に駐車している事故車両に次々とスリップした車が衝突。
最初の被害車輛の所有者がヤクザさんということもありました。
このときは損保会社4社がヤクザさん宅に集合する事態に。
私はこのヤクザさんとは旧知の間柄でした。
ヤクザさんの奥さんが事故に遭った際に担当したことがあるのです。
私が訪ねるとお茶が出ました。
その際に「今日は●●社の連中をやっつける!高橋さん、俺を止めるなよ!」というのです。
過去にいやな思いをしたことがあり恨みを晴らしたいというのです。
特にいわれなくても止めはしません。
間違っても手を出さないように気をつけてあげるだけです。
●●社の担当者がやってきて、ヤクザさんが爆発!
「おまえんとこは最後に来やがって!」
「いや出がけに電話が・・・」
「言い訳すんな!傷もおまえんとこの客が突けたのが一番大きい!」
「いや、その傷は▲▲社の契約者さんが・・・」
私の会社に矛先を向けさせたいようです。
するとヤクザさんが
「▲▲社の客はかすっただけやろが!後からぶつけたお前んとこの客がデカい傷つけたんじゃ!」
実際に判別が不可能でしたので、結局は割合的に負担することになりました。
ヤクザさんは終始私に対して好意的でした。
過去に丁寧に対応していた結果ですが、これが「渡世の義理」か、と感じた24歳の私でした。
●●社の担当者はお茶も出してもらえず、ずっと正座させられていて気の毒でした。
その間に私にはコーヒーを出してくれました。
慣れない雪道では車を運転しない。
運転せざるを得ない場合は、約束に遅延しても時間をかけてしっかりチェーンを巻くようにする。
この2点を心に誓ったのでした。
★ 「雪とヤクザ」といえば「北陸代理戦争」
西村晃さんが首まで雪に埋められての熱演。
この映画については「映画の奈落」(伊藤彰彦)という面白い本があります。
モデルになった組長が、映画完成後にロケ現場の喫茶店で実際に殺される事件に発展。
深作欣二監督の最後の実録やくざ映画でもあります。
上記の本は、講談社が文庫化していますので入手は容易です。
左から遠藤太津朗さん・野川由美子さん・成田三樹夫さん・松方弘樹さん
実録やくざ映画には珍しく女性の生き様が描かれています。
そのためか、 後年の「極妻」シリーズの先駆けのような印象もあります。
冷酷で狡猾な役の地井武男さんの演技は必見!