配偶者居住権の抹消登記1
配偶者居住権は,特段の定めがないかぎり生存配偶者の死亡まで続くのが原則です。
では,その抹消登記を申請する場合に,不動産の所有権者が単独ですることは可能なのでしょうか?
答えは「できる」です。不動産登記法69条の適用があります。
登記原因は「死亡による消滅」です。
申請書のイメージはこういう感じです。
登記の目的 配偶者居住権抹消
登記の原因 令和3年6月24日死亡による消滅
権利者(申請人) 住所 氏名
配偶者居住権者 住所 氏名
配偶者居住権の抹消登記2
ところで,配偶者居住権にかんしては,その設定原因は遺贈,死因贈与または遺産分割です。
そして,冒頭に記したように,特段の定めがないかぎり生存配偶者=配偶者居住権者の死亡まで存続します。
では,Aが死亡し,その子Cが甲建物を相続して遺産分割でAの配偶者Bに配偶者居住権が与えられた場合に
Bが「もうええわ。ワシ,引っ越すし。おまえも甲建物売って新しい家でも買うたらどや」とCに申し出たとします。
BとCの間で配偶者居住権を消滅させることはできるでしょうか?
答えは「できる」です。では,その登記原因は?
1 抹消 2 合意解除 3 合意消滅 4 合意 5 放棄
いずれも該当しそうですが,配偶者居住権の設定が契約に基づかない点で2はあり得ません。
結局,実態をそのまま反映させるということで3が正解となります。
この場合は当然ながら不動産登記法69条が機能する場面ではないので共同申請です。
終期付き贈与
1 配偶者居住権を遺言でAがBに遺贈した場合
2 Aが甲建物の所有権をBの死亡を終期としてBに贈与した場合
どこが違うかといえば,甲建物の所有権が移転するか否かです。
2の場合は所有権が移転します。
では,2のケースでBが死亡した場合にはどうなるか?
Aは単独申請でA→Bの所有権移転登記を抹消する登記を申請することができるでしょうか?
少なくともA→Bの所有権移転は実際に発生した事実であり,抹消することはできません。
となれば,B→Aの所有権移転登記の申請が必要となり,それはBの相続人との共同申請ということになります。
2の内容が遺言による遺贈であっても結論は同じです。
終期付き贈与にかんしては大審院時代の決定があります。
この決定は,司法書士が手元に置いて使うコンメンタールではとりあげられています。
ところが「模範六法」には載っていません。
司法書士試験が来月4日に迫っているので,作問ネタになりそうな話を書いてみました。