抵当権を「設定する」という表現をします。
では,「その主語は?」というのが以下のお話です。
司法書士が書いた本や試験用のいわゆる予備校本みたいなテキストを読んでいると
「たとえばA銀行がBさんに融資をします。Aさんはその資金で土地を買って家を建てました。
その際にA銀行は貸し付けたお金の担保としてBさんの土地と家に抵当権を設定します。」
というような説明を目にすることがあります。
悲しいかな書き手は抵当権を理解していない可能性があります。
さすがにどういう権利かはわかっているとは思います。
でも言葉の使い方がおかしいのです。
抵当権を設定するのはBさんです。A銀行ではありません。
A銀行はBさんから抵当権の設定を受けるのです。
このことは司法書士なら登記申請において以下のような申請書を作った経験からわかるはずです。
登記の目的 抵当権設定
原 因 令和3年10月31日金銭消費貸借 同日設定
抵 当 権 者 福岡県糸島市〇▲XX番地Y
A銀行株式会社 代表取締役 黒田修司
設 定 者 福岡県糸島市◆■XY番地Z
AAAAAAAAAAB
以上にみるように,BさんがA銀行に対して抵当権を設定します。
A銀行が抵当権を設定するのではありません。
公刊されている本で誤記があるのは校正の問題もあるでしょう。
けれども書き手の責任が一番大きいと思います。
なぜこういう誤りが起きてしまうのか?
思うに,そういう誤った表現を使っているアンチョコ本で勉強したからではないでしょうか。
「ちゃんとした本」にはこういう間違った表現は絶対に使われていません。
ちなみに弁護士が書いた本ではかかる誤りを目にした経験はありません。
司法書士も「ちゃんとした本」を読まないといけないということです。
反対に,「ちゃんとした本」を読まなくても試験に合格できてしまう面があるともいえるのですが(笑)。
★ 上記の抵当権設定の例で使ったA銀行の代表者名は「新仁義なき戦い 組長の首」で
菅原文太さんが演じた役名です。写真左は小林稔侍さん。当初は小さな役が予定されて
いた稔侍さん。その役を撮影の見学に来た千葉真一さん(ノンクレジット)がやることに。
「仕事がなくなった!」と思っていたら,文太さんと最後まで行動を共にする大きな役への
配置転換でした。記事とはまったく無関係ですが,タイトルが中身と無関係の東映作品も
あるのでそれに準じました。