福岡県糸島市 司法書士 ブログ

器物損壊罪のはなし

1週間ほど前の記事にこういう内容がありました。

「同僚女性の水筒に尿を混入させて飲ませたとして、大阪府警西堺署は16日、

暴行と器物損壊の疑いで、大阪府柏原市上市(かみいち)、会社員、XX容疑者

(33)を逮捕した。」

  器 物 損 壊 ?

こう感じる人は少なくないはずですが、これは明らかに器物損壊罪です。

損壊については、 ① 「物質的に器物自体の形状を変更し、あるいは滅失させること」

② 「事実上または感情上その物の本来の用途に従って使用できなくすること」とされ、

これらをまとめて、「その物の本来の効用を失わせることをいう」と説明されています

(大谷實「刑法講義各論新版第2版」343頁)。

この定義をあてはめると、今回は水筒に尿を入れることで、所有者の女性が、気持ちの上で

本来の水筒の用途にしたがって使用できなくなり、結果的に当該水筒はその本来の効用を

失うことになります。

よって、本件は器物損壊罪なのです。

これに似た例は明治時代の大審院の判例があります。

すき焼き鍋に放尿したケースで器物損壊罪が適用されました

(大判明治42年4月16日 刑集15巻452頁)。

 上記は、司法書士試験に出題される可能性がある内容です。

  尤も、判例の結論さえ知っておけば解答可能な次元での出題ゆえ楽勝だと思います。

 

ついでに尿を飲ませた行為が暴行罪に該当する点を述べると以下のとおりです。

暴行罪における暴行は、人の身体に向けられた直接あるいは間接の有形力の行使です。

本件では尿を飲ませていますから、人の身体に直接的に有形力が行使されたことになります。

傷害罪にあたらないのは、刑法208条が

「人を傷害するに至らなかったとき」を暴行罪としているからです。

本件で、女性が腹痛や下痢などの症状を呈していれば、傷害罪が成立したところでした。

それにしても変な事件です。

具体的には、同僚女性のルイボスティーが入った水筒に尿を入れたというものですが、

その動機にかんしては報道がありません。

この種の事件については動機が興味深いのですが。

 勝新太郎さんが演じた大河ドラマ「独眼竜政宗」の秀吉

  政宗(渡辺謙さん)と初めて対面するシーンでは、脇差を政宗に預け、

 背を向けて小田原城を眼下に見下ろしながら放尿。

  政宗はその姿に圧倒されてしまう見事な場面でした。

  あのシーンは勝新さんの独壇場でした。

 

 

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