福岡県糸島市 司法書士 ブログ

債務整理の仕事

ダークなイメージ?

今は昨年度の合格者が簡裁代理権取得のために特別研修を受けているはずです。

その中の誰かが当該ブログを読んでくださっているかもしれません。

私の同期合格者の間では,債務整理をやりたいという人もいれば,回避したいという人もいました。

債務整理という仕事が,貸金業者との抗争のようなイメージだったり,

あるいは闇金対応の部分がつらそうにみえるようでした。

中には「仕事が会社法務みたいなものばかりだったらいいんですけどね」と言った人もいて驚きました。

会社法務はデスクに座って綺麗な仕事を「先生」としてやるように考えているようなのです。

会社法務が決してクリーンな話ばかりではないことは,社会経験がある人にはよくわかる話のはずです。

債務整理=ダーク,会社法務=クリーンというイメージの対比にも驚くのですが,

司法書士はきわめてクリーンな世界だけで生きていると考える人がいるとすれば,それは誤りです。

法律を生業にする以上,適法と違法の境界線で悩むのは当たり前。弁護士も同様です。

グレーな話を依頼者が望むからと前に進めるか,それとも適法性を欠くおそれがある以上は慎重を期すとすべきか。

あとは本人のモラルの問題です。

私じしんは,最も重視すべきは依頼者の利益であるが,法の許容範囲については十分な見極めが必要という立場です。

自分の判断が,結果として依頼者を危険に晒したり,

そして我が身をも守ることができないようでは法律を生業とするべきではありません。

さて,軌道を債務整理の話に戻すとして・・・上記のような債務整理=ダークは本当でしょうか?

曇りのち晴れ/雨のち晴れ/雨のち曇り

借金を背負い,そのせいで人生が袋小路に入り込んでしまったり,

気持ち的に前を向けなくなったり,あるいは死を意識するようになったり。

そういう状況を法の力で打開する。

これが債務整理の仕事ではないか。私はこのように思っています。

本来であれば,社会の一員として経済を回すべき人が経済の陥穽にはまってしまい,

社会に背を向けざるを得ない状況になっているのは勿体ないというほかありません。

そういう人たちにもう一度前を向き,社会の一員として活躍してもらうためにも,

嵌ってしまった落とし穴から抜け出し,立ち直ってもらう。

そのために法制度を活用する。

債務整理は暗い世界から明るい世界に移ってもらうための手段です。

交渉の難易度

債務整理の手法としては任意整理,再生,破産というものがあるのですが,

任意整理の交渉を怖がる合格者もいました。

貸金業者との間で「斬った張った」の戦いをしなければならないようなイメージを抱いているのでしょう。

しかし,残念ながらそれはありません。

貸金業者は紳士的で交渉は困難を極めるような状況には陥りません。妥当なラインで話が決まります。

大手の司法書士法人などは,債務者に面談して十分な説明のうえ,受任するという手続きのみを司法書士が行い,

交渉はすべてパラリーガル任せ,和解書(協定書)の作成もパラリーガル任せというところが少なくありません。

テレアポの手法で債務整理の相談を受け,それを司法書士が面談で受任,パラリーガルが処理する。

こういう感じで大量の事件を受任しています。司法書士の役割は鵜飼の鵜みたいなものです。

つまり,交渉はさほど労力がかからないというのが実態です。

醍醐味

以上のとおりですから,若い合格者の方々は,臆せず債務整理に取り組んでほしいと思っています。

社会経験が少ない方にとっては,依頼者から聞くことができるお話が,人生を考えるよい教材にもなるはずです。

不動産の売買の決済立会を「司法書士の花形業務である」と言った先輩司法書士がいます。

たしかに細部を調査して万事遺漏なきように準備したうえで,当事者の権利を守る点ではそのとおりです。

しかし,人の生きざまや心の叫びに接し,そこに踏み込んで寄り添い,ともに脱出を目指す点で

債務整理には法律を生業とする立場ならではの仕事の醍醐味が凝縮されているように感じます。

債務整理は人間の心の陰影を感じつつ,人の生き方をじっくり考えることができる点で

不動産登記業務以上の価値があるのではないかと思っています。

これから特別研修を経て認定考査を受験される方は,しっかり勉強してください。

簡裁代理権がなければ任意整理の仕事はできませんので。

 

ブログ一覧へ戻る

お電話

メール

ページの先頭へ
Loading...