「今の後見制度は使えませんから」
この数か月でこの言葉を数度聞いています。
口にした人は、すべて後見業務に関わったことがない人たち。
つまり、偏った報道や誰かの発言をそのまま自分の発言にしているパターン。
自らの経験上の判断ではないのです。
中には
「家族信託が広く普及して一般化したのは後見制度が駄目だから」
と言った人がいました。
家族信託は今もマイナー分野です。
マイナーにとどまっているのは、ハマるケースが少ないから。
つまり、使える場面が限られているのです。
セミナーを主催している住宅メーカーの人などに聞くと、全然わかっていないのが実情です。
後見制度が使えるか使えないか?
十分に使えるでしょう。
使い方次第だということは、実際に触れない限りは分からないと思います。
この種の評論家的無責任発言はいくらもあります。
訴訟代理人の経験も資格もない人が私に向かって
「少額訴訟みたいに司法書士の活躍の場も広がっています」
と裁判業務について「教えてくれた」ことがあります。
そもそも論としてプロは少額訴訟制度*を使うことはありません。
これは以前の記事にも書いたとおりです。
プロの目からみると「使えない」のです。
一方、素人さんが自ら訴訟を提起するには敷居が低くていいかな、とは思います。
私に教えてくれた人は、私が何も知らないという前提だったのかもしれません。
私は会社員時代に訴訟代理人経験をかなり積んでいます。
100件未満だとは思いますが、原告代理人として法廷に立ってきました。
勿論、訴状や準備書面は私が書きました。
何も知らないまったくの素人ではないのです。
クロウトなら
「てめえ、なめてんのか?こっちはトウシロじゃないんだよ」
と啖呵を切る場面ですが、私は武闘派ではないつもりです。
★ 「こっちはシロウトじゃないんだよ」と小沢仁志さんがひとこと口にすれば・・・
私にはこの迫力はないのでした。
よって
「いやあ、さすがに我々が少額訴訟を使うのはねぇ(笑)」
という程度にしておきました。
たぶん「教えてくれた人」にはなにがなにやら意味が分からなかったと思います。
というように「知らないことや未経験のことを軽々しく論じない方がいい」というオハナシでした。
*なお、あえて少額訴訟を選ぶべき事件がないわけではありません。
勝ち負けがハッキリしていて、かつ被告の履行可能性が極めて低い事件です。
その場合の強制執行までみすえると、少額訴訟を選ぶということもあり得ます。
司法書士法の知識があれば、この説明の意味がわかるはずです。