先日、福岡簡裁で被告本人尋問をしました。
私にとって、法廷での尋問は17年ぶりくらいです。
久々とあって、緊張・・・したかというと緊張しませんでした。
どちらかといえば、漸く自分の庭に戻ったという心境。
尤も、今回は被告代理人の私です。
被告本人尋問ということは主尋問のみ。反対尋問は原告側がやります。
だから、証言の矛盾を突いて証言を崩すようなことは一切ないのです。
事前に打ち合わせておいて、概ねそのとおりに進行させます。
裁判所に向かう車の中で被告と話していると、面白いエピソードが出てきました。
「よっしゃ、それ使おう」
私は発案し、うまく織り込みました。
被告の言い分を補強する家族の証言を陳述書として法廷に出しています。
家族の証言ですから割り引いてとらえられるのはやむを得ません。
その印象を変えることに役立ちそうな話だったので使うことにしたのです。
テレビドラマでは、主役の弁護士が「異議あり!」をやっています。
でも、普段の法廷では異議は少なめです。
ですが、原告の代理人は原告である会社の社員で、ある種の素人です。
異議を上手に使えば反対尋問が腰砕けになる効果があるかもしれません。
事前に被告に対しては異議を使うかもしれないと言っておきました。
ある意味では「いちゃもん」に近い異議でしたが、使いました。
原告の反対尋問はあっさり終わってしまい、被告も驚いていました。
一応、これで結審。
本件では、裁判所から一度も和解の打診がありませんでした。
仮に、裁判所から和解を打診されたら・・・
原告は考えたでしょう。そして応じる意思を表明したのではないか。
被告であるこちらは?
心が揺れたと思います。
「勝てないよ」という裁判所からサインとも受けとれるからです。
和解の打診がなく、原告からも被告からも触れないまま。
来月には判決を迎えます。
★ ドラマ「やさしい猫」の麻生祐未さん
弁護士役で被告代理人の設定。その演技は棒読み調ーこれがリアルすぎて驚きました。
役作りで実際の尋問を見学されたことは想像に難くありません。
尋問事項を書いたメモを手に棒読み風に尋問する麻生さんに私は拍手喝さいを送りました。
あまりに本物っぽくて弁護士さんあたりは手を叩いて喜んだに違いないでしょう。
短い出演シーンでしたが、強烈な印象を残した演技です。