今年の秋は、東北から北陸にかけてツキノワグマによる被害が多発しています。
なぜ、そうなったか?
昭和から平成初期にかけて、こういう被害はそう多くはなかったのです。
今年はブナ科植物の果実(いわゆるドングリ類)が不作だからといわれます。
しかし、そういう裏年は過去にも何度もありました。
人の住む地域にクマがアクセスしやすくなり、人と遭遇するクマが増えたようです。
その原因は、里山の手入れをしなくなったからでしょう。
里山は、一種のDMZ(非武装中立地帯)として機能していました。
野生動物も、人手が入る里山の手前までしか侵入しなかったのです。
人の気配は、野生動物にとっては恐怖そのもの。
人が薪を集めたり、あるいはシイタケの榾木を栽培しているところにはやって来ないのです。
ところが、生活様式の変化から里山は荒廃し始めます。
さらに人口減少が重なり、放置される里山が続出。
その結果、人の住む地域ギリギリまでクマがやって来るようになったのです。
すると、その先には実った柿や収穫を待つ米が・・・
「う~ん、うまい!」
こうしてクマは人里の「味」を覚えます。
徐々に車の音や人の気配にも慣れてしまい、今の状況が生まれた。
こう考えることができると思います。
★ 東映映画「北の蛍」に登場した着ぐるみの熊
仲代達矢・岩下志麻・露口茂・佐藤浩市・丹波哲郎といった大物が顔を揃えました。
ナレーションは夏目雅子さんで、これが遺作。
熊の着ぐるみが登場しなければ、なかなかの映画だったのですが・・・
五社英雄監督作品の中では評価が難しい作品になってしまいました。
次は、マダニの話。
マダニの被害も増えました。
マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は死亡率20%。
私自身が山林、特に里山などで蝶の調査に汗を流していた時代にマダニを恐れたか?
ほとんど気にしていませんでした。
そういう被害が起きていなかったのです。
堂々と半袖シャツで森や藪に分け入っていました。
今はそういうことは無理です。マダニが待っているかもしれません。
なぜ、マダニが身近な存在になったのでしょう?
これも里山の荒廃に原因がありそうです。
野生動物を寄主とするマダニは野生動物に運ばれます。
上記したように、里山がDMZとして機能しなくなった結果・・・
人里ギリギリまで野生動物がマダニを運んでくるのです。
クマだけでなくシカやイノシシも畑を荒らします。
「うまそう・・・食べちゃおう」
こうして人里の「味」に魅了された野生動物はお礼にマダニを置いていくのです。
そうすると、こうした被害防止には里山の復活こそが最も効果があるように思われます。
行政はこういう点に予算をつけてくれればいいのですが。
高齢化時代に里山の手入れをする人手はなかなか集まりません。
そうであるなら、集める方法として行政の予算活用を。
私はこう思っています。
ついでにいうと、河川敷の荒廃も目立ちます。
以前は採草地だった河川敷も人手が入らなくなり、藪から森林化。
野生動物の通り道として好適な条件を備えるようになっています。
かつて、人の暮らしには里山や河川敷が役立っていました。
生活様式の変化に罪はありません。
人の生きる環境維持を忘れてしまったのは人自身の罪でしょう。
おカネをかけてでも、環境を整える。
安全と安心のためには当然だと思うのですが。
★ 東映の大作「日本の首領 野望編」の松方弘樹さんと藤岡琢也さん
松方さんが演じる松枝は東大卒のヤクザで経済ヤクザの顔を持っています。
三部作の第1作「日本の首領 やくざ戦争」で自らのことを
「なにせ社会のダニと呼ばれる存在ですから」
と卑下するのではなく、寧ろ誇らしげに語るシーンが印象的でした。